特例一時金の仕組み(特例一時金の考え方と計算方法)
1.特例一時金額の考え方(将来の年金を施行日の一時金に現価換算。法令で規定)
特例一時金の額は、将来にわたり受給する特例年金額を施行日(令和2年4月1日)まで割り引いた(現価換算した)金額です。
具体的には、
(1)年金受給権者の第1号特例一時金額 | 令和2年4月から終身にわたり受給する見込みの特例年金額(※1)を一定の割引率(※2)により割り引いた金額。 |
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(2)年金未裁定者の第2号特例一時金額 | 支給開始年齢に達する日の翌月から終身にわたり受給する見込みの特例年金額(※1)を一定の割引率(※2)により割り引いた金額。 (下の図表「年金未裁定者の特例一時金計算の仕組み」参照) |
※1 終身にわたり受給する見込みの特例年金額とは、令和2年4月(特例年金の支給開始年齢前の方は支給開始年齢の到達月の翌月)以降の各月の特例年金額に予定生存率を乗じて得た額をいいます。
この計算で使用する予定生存率は、厚生労働省が作成する生命表(第22回国民生命表)等を勘案して農林水産省令で定めています。予定生存率は0歳の100% から始まり、年齢が嵩じるにしたがって生存率は徐々に低下し、116歳(男性は113歳)で0% になると定めています。
※2 一定の割引率とは、厚生年金の財政検証で用いられる市場金利の動向等を勘案して農林水産省令で定めた利率(下表「各年度の割引率」)をいいます。
また、割り引いた金額とは、令和2年4月から将来にわたり支給される見込みの各月の期間に応じた割引率により複利現価法で計算した額をいいます。
【各年度の割引率】
(単位:%)
年度 | 令和2 | 令和3 | 令和4 | 令和5 | 令和6 | 令和7 | 令和8 | 令和9 | 令和10 | 令和11 | 令和12以降 |
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割引率 | 0.00 | 0.00 | 0.00 | 0.25 | 0.5 | 1.05 | 1.65 | 2.05 | 2.30 | 4.00 | 4.00 |

2.特例一時金の計算方法
(1)計算式
特例一時金額は、前記.(1)及び(2)の考え方を踏まえた「年金現価率」という換算率を用いて、次の算式により計算します。

(2)計算式で使用される各種数値については
①特例老齢農林年金額は次の算式により計算されますが、その基礎となる各種数値は、下記②以降のとおりです。

②平均給与月額は、平成14年3月までの農林年金組合員期間における標準給与月額の平均額です。
平均給与月額の算定に当たり、過去の標準給与月額は平成14年までの水準に再評価し、さらに、平成16年の法律改正により物価下落を反映して2.9% 引き下げた水準になっています。
③支給率1.425/1000は、昭和21年4月2日以降生まれで、かつ農林年金組合員期間月数が240月以上の方の支給率です。また、組合員期間月数が240月未満の場合は、半分の支給率(0.713/1000)とされます。
ア、〈組合員期間月数が240 月以上あるか否かの判定にあたっては〉 平成14年3月31日までの農林年金組合員期間に引き続く平成14年4月1日以降の農林漁業団体勤務期間(厚生年金被保険者期間に限る。「継続厚生年金期間」といいます)を通算して計算します。(下図の(A)+(B))
イ、〈平成14年3月31日に引き続いて令和2年4月1日まで農林漁業団体に継続勤務していた方(厚生年金被保険者である方に限る)の「継続厚生年金期間」については〉 特例一時金額の算定にあたって、一律240月以上とみなします。
④農林年金組合員期間月数は、平成14年3月までの農林年金組合員期間を合計した月数です。
(下図A参照)

⑤年金現価率は、受給者の性別と令和2年3月31日現在の年齢により定められています。
計算結果である「年金現価率」については、下表「特例一時金の年金現価率表(抜粋)」参照。

【参考1】特例一時金額の計算例
事例1
- 年齢:70歳0月(令和2 年3月31日現在)
- 組合員期間:30 年(昭和47年4 月~平成14 年3月)
- 平均給与月額:20万円
【計算式】特例一時金額=特例老齢農林年金額×年金現価率
特例老齢農林年金額=平均給与月額(20 万円)×支給率(1.425/1000)×月数(360)= 102,600円
特例一時金額=102,600円×年金現価率(男性13.483698,女性16.320502)
=1,383,427 円(男性)
=1,674,484 円(女性)
事例2
- 年齢:60歳0月(令和2 年3 月31 日現在)
- 組合員期間:20年(昭和55 年4 月~平成12 年3 月)
- 平均給与月額:20万円
【計算式】特例一時金額=特例老齢農林年金額×年金現価率
特例老齢農林年金額=平均給与月額(20万円)×支給率(1.425/1000)×月数(240)=68,400円
特例一時金額=68,400円×年金現価率(男性14.180671,女性16.825857)
=969,958円(男性)
=1,150,889円(女性)
事例3
- 年齢:50歳0月(令和2年3月31日現在)
- 組合員期間:10年(平成4年4月~平成14年3月)
- 平均給与月額:20万円
● 継続厚生年金期間を含めて240月以上の場合
【計算式】特例一時金額=特例老齢農林年金額×年金現価率
特例老齢農林年金額=平均給与月額(20万円)×支給率(1.425/1000)×月数(120)=34,200円
特例一時金額=34,200円×年金現価率(男性8.651885,女性10.574942)
=295,894円(男性)
=361,663円(女性)
● 継続厚生年金期間を含めても240月未満の場合
【計算式】特例一時金額=特例老齢農林年金額×年金現価率
特例老齢農林年金額=平均給与月額(20万円)×支給率(0.713/1000)×月数(120)=17,112円
特例一時金額=17,112円×年金現価率(男性8.651885,女性10.574942)
=148,051円(男性)
=180,958円(女性)